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小坂奈緒さん 1993年生まれ 南箕輪村出身 南箕輪村在住
東京の専門学校を卒業後、実家の小坂牧場に就農し4年目。
現在は、社長である父の背中を見ながら後継者として日々奮闘中。
小さいころから動物に囲まれて
家族が営む牧場で昔から動物と遊んでいました。小学校高学年あたりから作業を手伝うようになり、将来はこの牧場で働くのかな…となんとなく思っていました。
中学3年生のころ、進路を考えるにあたり、「実家の牧場で働きたい」という思いと、「実家の牧場で働かなければいけない」という思いが半々くらいありました。両親は「無理に家業を継ごうとすることはない」と言ってくれました。ただ、動物に関わりたいという気持ちはあったので、高校は上伊那農業高校の生物科学科に進学しました。その後東京の動物関係の専門学校に進学しました。
しっくりくるのはここだった
専門学校での実習では、日本各地の観光牧場や動物園で働きました。その中で、動物をお客さんに見せることを中心とした観光牧場よりも、動物のために環境を整えることができる生産牧場で働きたいと感じました。
卒業後は、「他の職業も経験したほうがいい」という両親の言葉もあり、村外の動物病院で三か月間働きましたが、室内で働くのは自分に向いてないと思いました。実家の小坂牧場は生産牧場であり、「やっぱりここが一番しっくりくるな」と思い就職を決めました。
小坂牧場で飼育している動物
・ホルスタイン 発育段階によって呼び名、牛舎等が異なる。
搾乳牛(乳をとる牛。)
乾乳牛(2か月以内に出産を控えている牛。)
育成牛(出産未経験の、まだ乳が出ない牛。)
哺乳牛(生まれて2~3か月以内の哺乳をしている牛。)
・黒毛和牛
10か月まで育てて市場に出す牛
受精卵を採るため用の牛
・馬
・そのほかペットとして
ヤギ、猫、犬、ヘビ
一日の仕事内容
・えさやり
・ヤギ小屋の掃除
・搾乳
・牛舎掃除
・哺乳
・牧草刈り、柵の修理など
5時半に出勤し、だいたい12~15時まで休憩をとり、19時半に終業となります。
搾乳牛
毎日2回朝夕搾乳します。集乳車が1日1回昼に来て出荷します。
約50頭飼育しています。1頭あたり1日30L乳が出るのが理想とされていますが、全体で約1500L出ているので良い方だと思います。
黒毛和牛
産まれてから10か月まで育て、市場に出します。
市場では、質、大きさを見られた上で競りによって値段が付けられます。
JA上伊那ブランド牛乳「酪農家のおもてなし」の活動への参加
JA上伊那管内の若手酪農家が売り出している上伊那ブランド牛乳の商品「酪農家のおもてなし」のPr活動にも参加しています。酪農家は全国的に減少しており、上伊那も従事者の高齢化や後継者不足により減少しています。その中で、「おもてなし牛乳」の活動を通して上伊那の若手酪農家と会うことができ、良い刺激となっています。
動物相手の大変さ
動物相手なので、天候に関わらず毎日屋外で働かなければなりません。どんなに暑くても寒くても雨が激しくても、屋外での作業をしなければいけないので大変な時もあります。
また、マニュアルがなく、予想外の事態に対応することが多いです。以前、搾乳中にホルスタインが急に足を蹴り上げて、私の顔面に当たったことがありました。大けがにはなりませんでしたが、驚きましたし、安全管理の大切さに改めて気付きました。
好きなことを仕事にできる喜び
もともと動物の世話をすることが好きなので、楽しいと思いながら働くことが多いです。
また、良い牛が育つと嬉しく、やりがいを感じます。小坂牧場では和牛を産まれてから10か月まで育てて、市場で売りに出します。和牛が高い値段で売れると、和牛も小坂牧場の仕事も認められた気がしてうれしいです。産まれてから大切に育てているので、市場でついた値段が安いと、切なくなります。また、搾乳牛であるホルスタインも、月に1回ある乳用牛群能力検定事業で一頭一頭の牛乳の品質を調べます。量がたくさん出たり、品質が良い牛が増えたりすると嬉しく思います。
休みは月5日、他の従業員と被らないように取っています。
大好きなサッカーチームの松本山雅の試合に応援に行くのが楽しみです。
年間パスも購入し、松本のアルウィンでのホームゲームはできる限り行っています!
専門学校時代の友達に会うために東京に遊びに行くことも楽しみの一つです!
後継者として
昨年、家畜人工授精師(発情期がきた雌牛に精子を入れる技術)の免許を取得しました。現在は人工授精も受精卵移植(すでに受精した卵子を入れる技術)も外部の方にお願いしていますが、いずれは自分でできた方がいいと思い免許を取得しました。
また、今は父に任せたり分担したりしている仕事内容も、少しずつ私ができるようになっていきたいと思っています。
地域に開いた牧場に
小坂牧場を、一般の方にも気軽に来てもらえる牧場にしたいです。
専門学校時代の実習を通して、お客さんに動物を見てもらったり自分の仕事を紹介したりすることの楽しさを学びました。
小坂牧場も、牧場のPrや整備をすすめて、気軽に足を運んでもらえるようにしたいなと思っています。
「きみの友だち」 著 重松清 (新潮社)
主人公と同年代だった学生時代に読みました。
年齢を重ねていくと、学生だった時間は人生の中での割合としては少なくなっていきます。でも、学生時代に見たことや感じたことは大人になってからも鮮明に覚えているものです。“学生時代”の経験ってすごく大切なんだと思えた一冊です。
この仕事に就くには
必要な資格は特になし
新規就農の流れ
・農業技術を取得する。(座学で得る酪農に関する知識だけではなく、実習等での技術獲得も必要。)
・個人事業主として起業するか、農業法人に就職する。
小坂さんは、上伊那農業高校で農業に関する基礎的な知識を学んだあと、東京の動物専門学校に進学し、日本各地の牧場等での実習経験も積んだ。