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伊藤 和弥さん 1967年生まれ 伊那市出身
東京都の寿司割烹や和食屋で修業を重ね、松本市や伊那市の飲食店でも数年間経験を積む。
2007年に伊那市で弟と和食料理屋「藤よし」を開店。2016年に南箕輪村で創作ガレット専門店「藤十郎茶や(Totorou茶や)」を開店。
地元のもの・旬のものを食べて健康に
藤十郎茶やは、創作ガレット専門店です。「創作ガレット」はそば粉でできたクレープのような生地の上に色々な食材をのせたものです。
お店のこだわりは、使っている食材の8割が地元・上伊那産であることです。野菜や穀物をはじめ、辰野のギタロー軍鶏(しゃも)などを使っています。肉は、ホルモン剤などを使用しない長野県産。魚は、日本近海の天然の旬魚を使っています。肉も魚もおいしく食べつつ、地元のもの・旬のものを食べることはとても健康にいいことだと思います。「四里四方に病なし(自分の身の回りでとれる食材を食べていれば病気にかからず健康でいられる)」ということわざがある通り、お客様に地のもの・旬のものを食べていただきたいと考えています。地元の食材を使うことで、地元の経済が回っていくことに貢献できればいいとも思います。
古民家を自分の手でお店に
お店は、購入した古民家のもともと持っている味を生かすように改装しました。キッチンや傷みがひどい部屋は業者に頼みましたが、自分でできるところは自分でコツコツとやっていきました。テーブルを並べた部屋や、純和室など、それぞれの部屋の雰囲気を変えています。庭や看板も、知り合いの植木屋さんや看板屋さんに協力してもらいながら自分で作りました。
○お店の営業日は月~土曜日、営業時間は午前10時~午後4時
○午前8時から10時 仕込み
・私以外の従業員は全員パートさんなので、勤務時間が限られています。パートさんが営業時間内にやりやすいように朝のうちに野菜などを仕込みます。
・スープ…和風仕立てで、かつおと鶏のダブルスープです。
・前 菜…彩り豊かな前菜が売りの一つです。野菜は扱いやすいよう、ちぎって並べておきます。生魚も切っておきます。蒸かしたり煮たりする前菜も作っておきます。
・ローストビーフ、軍鶏(しゃも)、サーモンなども用意します。
○午前10時 開店・買い出し
・パートさんにお店を任せ、細かいものを買い出しに行きます。パートさんは2人くらいでお店を回すことができます。
〈前菜とスープ〉
○午前11時 メニュー作りなど
・厨房で料理を作るだけではなく、メニューやパンフレットのデザインを考えたりSNSでの宣伝をしたりしています。良い食材を使っておいしい料理を出していても、それを伝えられないとお店に来てもらえないので、いろいろな工夫をしています。
○午後4時 閉店・片付け
・店内の清掃だけではなく、洗濯や売り上げの集計を計算します。弟の営む「藤よし」の手伝いに行くこともあります。
○ディナー
・予約をいただけば5名様以上からディナーも営業します。コース料理となるので、料理を出す際に丁寧に食材の説明もします。
〈ある日のディナーメニューの一部〉
○仕入れ
・火・木曜日は、朝仕込みをした後に仕入れに行きます。火曜日は諏訪、木曜日は松本へ行って良い魚を信頼できる方から仕入れています。
○地域を盛り上げる活動へ所属し、会議へ出席
・伊那餃子会、伊那谷ガレット協議会、伊那商工会議所「伊那の食プロジェクト特別委員会」に所属しています。上伊那地域の飲食店や行政と協力し、地域を盛り上げる活動に参加しています。
弟の言葉で希望とは違う道へ
祖父は竹細工職人、父は寿司職人という家庭で育ちました。私は服飾関係の道に進みたかったんです。高校3年生のとき、服飾の専門学校のパンフレットをもらったタイミングで、1歳下の弟に「父の寿司屋が1代で終わるのは、父は寂しいんじゃないかな」と言われました。そうじゃないかと私も頭の片隅で思っていたことだったので、服飾ではなく、料理の道に進むことに決めました。高校を卒業して、父の紹介で東京の寿司割烹で5年修業を積みました。
どこか嫌々だった
18歳から5年間東京都で修業をして、松本市で12年、伊那市で3年経験を積みました。35歳くらいまでは「何が楽しいんだろう?」と自問自答を続けていました。どこか嫌々やっていましたね。
そんな中で、私と同じように料理の道で経験を積んでいた弟と「自分たちのお店を開こう」という話になりました。一からお店を作っていくことは本当に大変でしたが、そこに面白さも感じていましたね。そして2007年に、伊那市で「藤よし」を開店しました。「藤十郎茶や」と同じく地元産の食材にこだわった、和食料理屋です。家族が体調を崩して色々と大変な時期でしたが、弟と役割分担をしながら、お店を開店させることができました。
また、2015年ごろからカフェを開店しようと思いお店の改装など準備をして、2016年に「藤十郎茶や」を開店しました。
「自分で経営していくこと」の大変さ
雇われているときは、お金をもらう立場だったので、不満をもらすこともありました。自分でお店を持って初めて、完全に自分の生活をかけてやっていくことの大変さを実感しました。一人では生きていけません。パートさんや仕入れ先の方をはじめ、周りの方々に助けられているんです。人付き合いを大切にしたり、常に笑顔で前向きに取り組んだりするようになりました。
楽しく!
とにかく「楽しく」!うまくいかないときも笑顔でいることが大事です。落ち込んだり、すねていては次につながりません。つらい時に笑顔で頑張れる人を、周りは認めていくものだと思います。あきらめず、失敗で学ぶことができればいいのです。できるだけ楽しく、笑顔で過ごせるように自分をコントロールするようにしています。本を読んで、色々な選択肢を自分の中に用意できるようにもしています。
「継続する」
お客様にほめてもらえたときは、とてもうれしいです。おいしいものを提供し続けること、お客様に来ていただき続けること、…「お店を続ける」ということはとても難しいことだと思います。どうすればお店の良さがお客様に伝わるのか日々考え、実践しています。メニュー表を作ったり、SNSを更新するのも、色々と研究しながら全部自分でやっています。「言うは易し」、ですからね。自分から行動!が大事だと思っています。
人を育てたい
また、次世代の育成も今私がやるべきことなんだろうとも思っています。「飲食の道で頑張りたい」という若手を応援できるよう、私にできることは協力したいと思います。信州大学農学部の学生もアルバイトで働いてくれていますが、彼らにも何か学んでもらえればいいですね。
『ほんとうの心の力』 著 中村天風 (PHP研究所)
この本を読んでおけば、つらいときや、くさりそうになったときに、前向きになれる考え方を身につけることができます。後悔するのではなく、反省をして次につなげる。天風さんは日々を楽しく前向きに生きることの大切さを、軽やかに語っているんです。読みやすいのでオススメですよ。
〈藤十郎茶や(Totorou茶や)〉
住 所 〒399-4511 上伊那郡南箕輪村 神子柴7233-1
電話兼Fax 0265-76-8863
営 業 日 月~土曜日
営業時間 午前10時~午後4時
(予約をすればディナーも営業可能)
お店の情報はFacebookで!
この仕事に就くには
飲食店に勤めるだけであれば資格は必要なし
飲食店を経営するためには、
・保健所に飲食店営業許可申請をする
※お店の設備が、都道府県知事の定める施設の基準に適合しているか判断を受ける。
・「食品衛生責任者」の資格を取得する
※飲食店を開業するために、各店に一人の食品衛生責任者の資格を持つ人を置かなければならない。
食品衛生責任者と認められるのは、調理師・栄養士・製菓衛生士などの資格を持つ人。
ただし、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば開業することもできる。
伊藤さんは飲食店で経験を重ねた後、調理師試験を受け、調理師免許を取得した。