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イルミネーションフェスティバル誕生秘録
イルミネーションフェスティバル誕生秘録(広報みなみみのわ 2009年9月号掲載)
大芝高原に現れた幻想的な光景。
LEDライトが作り出す淡い光は、私たちを魅了し、イルミネーションフェスティバル開催期間中には県内外から多くの人が大芝高原に訪れます。南箕輪の秋の風物詩として定着したこのイベントはどのようにして生まれたのでしょう。
イルミネーションフェスティバル誕生から現在に至るまで、語られることのなかった秘話がいまここに!
※使用した文章や写真は、広報紙掲載当時のものです。
始まりは平成の合併
イルミネーションフェスティバルは、村民有志により組織されるイルミネーションフェスティバル実行委員会により運営され、「思い出と感動・人と人との語らい・つながりを通して癒しの空間を創造し、心に残る時を演出する」をテーマに開催されています。
今年で4回目を迎えるこのイベントは、来場者・出展数共に、年々増加してきていて、去年は13万人もの方が会場を訪れました。
「行政に頼ることなく、自分たちの力で南箕輪を元気な村にしたいとの思いからイベントを企画しました」と語るのは、実行委員会長の有賀章治さん。
「何かをやろうと思ったきっかけは、平成の合併でした。村も合併するか否かの住民投票があり、その中で村は自立を決めましたが、周りの市町村が合併していくなかで、南箕輪は小さい村だけど俺たちは元気だよと各市町村にPRしたい。そのためにインパクトのあることをしたいという考えから実行委員会を立ち上げました」
「始めはどんなイベントにするかも決まっていなかったんですが、大芝高原を舞台に何かをやりたいと考えていました。マンネリ化している大芝高原まつりに新しいイベントを考えようとか、できるできないに限らず、色々なアイデアを出し合いました」
そんなアイデアの中に、LEDライトを使ったイルミネーションがあったそうです。当時の上伊那では、イルミネーションは住宅や庭などの飾り付けなど個人レベルでの展示が多く、公園などで広域的に展示される場所はありませんでした。公園内のため、民家の明かりも届かず、イルミネーションには絶好のロケーションです。
しかし問題もありました。
「発案者以外、誰もイルミネーションのことを知らなかったんですよ」
有賀さんは笑顔で当時を振り返えり、そう言いました。
「何も知らないゼロからのスタートだったので、サンプルを作って展示したり、作り方の講習会を開いたりもしました」
「イルミネーションとは何か」から始まった実行委員会の活動。「作り始めてみると、出来上がっていく過程が楽しくて、みんなハマッてしまいました(笑)」
自分たちだけではなく、多くの人に作る楽しさを知ってもらいたいと、50区画を目標に参加者を集めることになったそうですが、個人レベルでは限界があります。そこで、実行委員会は商工会に協力を求めました。商工会を通じて村内企業に呼びかけ、村内や近隣市町の企業や個人73組が参加してくれることになりました。
予想外の盛況
参加者も集まり、無事に開催されたイルミネーションフェスティバル。しかし、予算的な都合から積極的な広報は行っていませんでした。
「始めた当初は、本当にお金がなくて、名刺も作れなかったんですよ。運営資金のほとんどが個人の持ち出しでしたから。それは今でも変わっていませんが、現在は企業の皆さんのご協力でチラシやポスターも作れるようになりました」
広報不足にもかかわらず、休日ともなると、会場は多くの人であふれかえりました。
「当初は、近郊の方たちが見に来てくれるくらいかなと予想していました。しかし、新聞にイベントの様子が掲載されると、県内中から見に来てくれるようになったんです。ここまでの人出は考えていなかったので、急遽、交通誘導の人員を手配しました」と、有賀さん。2年目からはこの経験を活かし、臨時駐車場を確保するようになりました。
「暖かいものが食べたい」との要望から屋台の出店も行い、障害者の方にも楽しんでもらいたいと貸し出し用車いすの常備なども行いました。
実行委員会は常に、来場者の心に残るイベントにしようと努力しています。
秋にイルミネーション?
イルミネーションというと、大概はクリスマスシーズンを中心に飾られるものという認識があります。しかし大芝高原のイルミネーションフェスティバルは10月。秋の開催です。なぜ、この時季の開催となったのでしょうか。
「イベントを企画した時から、12月のクリスマスシーズンの開催は考えていませんでした。冬の大芝高原、特に夜間はとても寒いんです。小さな子どもからお年寄りまで、すべての人が楽しめなくては良いイベントにはなりません。夏の開催も考えたんですが、夏は人ばかりでなく虫も光に寄ってくるんですよ(笑)。それで秋に開催することにしました」
実際、会場には小さな子どもを背負った母親や、孫に手を引かれ訪れたお年寄りの姿も見られました。
「時節柄、秋雨が続くこともありますが、意外と雨の日のイルミネーションも綺麗なんですよ。濡れた路面に光が反射してゆらめく様子はとても幻想的なんです」
晴れの日とは違った姿が楽しめる雨の夜。あなたも1度見てみませんか?
パワーアップした2年目
2年目には前回を上回る120組の出展がありました。
「このころから、作品が競うように大型化したように感じます。あまりエスカレートするのもどうかという意見もあります。このイベントには企業だけでなく個人の参加もあるからです。でも、参加者がイルミネーションを作って展示し満足できればいいですし、さらにお客さんが見て満足すればいいと思います」
個人参加者の作品には、小さいながらも素朴さや、温かさがあるように感じられます。子どもに喜んでもらうことを主眼に置いた作品も多く展示されています。
「私たちが考えるイルミネーションフェスティバルとは、大芝高原というキャンバスに絵を描くようなものです。1号の絵を描く人もいれば、100号の絵を描く人もいる。展覧会に様々な絵が展示されている感じですね」
光と音の競演 3年目
3回目を迎えた去年は、参加者数も222組と大幅に増加しました。
「去年からは保育園児や小学生も参加してくれるようになりました。また、開催期間中に、フルートとピアノによる「星空コンサート」も開催しました。このコンサートは、商工会有志が企画したものです」
コンサートは、辰野町出身のフルート奏者、赤羽泉美さんと、東京在住のピアニスト今井亮太郎さんのデュオによる演奏が行われました。
会場には多くの人たちが集まり、手拍子をしたり体でリズムを取ったりしながら、イルミネーションと音楽の共演を楽しんでいました。
「私たちは、イルミネーションだけにこだわってはいません。たまたま入口がイルミネーションだっただけで、他の企画が入って、それが伸びていく可能性もあると考えています。たまたまこれだけの大きなイベントになりましたが、いつかは飽きられてしまう日がくるかもしれません」
「そんな時には、コンサートなどが伸びていくかもしれません。そのために間口は広くしておこうと思っています。LEDの光を消してしまうこと意外は、何でもとり込んでいき、その中から伸びていく企画が出てくれば良いと思っています」
去年好評だった星空コンサートは、今年も開催するそうです。ぜひ、光と音の競演をお楽しみください。
2人は得意とするブラジル音楽のひとつボサノバを中心に、約2時間にわたり素敵な曲を披露してくれました。
常に新しいことを
大芝高原でのイルミネーションフェスティバル開催には色々な可能性があると有賀さんは言います。
「高原内の通路はバリアフリーの舗装がされているため、車イスやベビーカーの方でも安心してイルミネーションを見ることができます。また、公園の駐車場も使えるため、多くの方の来場が可能です」
常に新しいイルミネーションフェスティバルにするため、実行委員会では今年、新たなイルミネーションを作るそうです。
「イルミネーションの淡い光を消さないため、照明は付けることができません。そのため去年、暗くなる場所でも安心して歩けるように、実行委員会で小さなイルミネーションを設置するようにしました。これは以外にも、イルミネーションの途切れていた箇所を結び、会場に一体感がでるようになりました」
「今年は、その小さなイルミネーションを広場に100基ほど並べて、小さな光の森を作ります」
大きくなりすぎたイベント
200基を越えるイルミネーションと、10万人を越える方が訪れるようになった大芝高原でのイルミネーションフェスティバル。規模が大きくなりすぎたための問題もあるそうです。
「参加者を探すのがかなり大変ですね。去年以上にという考えが実行委員会みんなにあるので、新しい参加者を見つけていかなければいけません。南箕輪だけでなく、上伊那レベルで参加者が集まれば良いと思います」
足りないのは参加者だけではないようです。
「期間中は、万が一にも事故が発生しないように実行委員による会場内の巡回などを行っています。その他にも色々な仕事があります。イベントが予想以上に大きくなりすぎた結果、現状の実行委員会では運営しきれなくなってきています」
「22人で始めた実行委員会でしたが、現在は42人でイベントを運営しています。その多くが60歳以上です。20代、30代の皆さんが参加してくれれば、良りよいイベントになると思います」
実行委員会では、一緒に活動してくれる仲間を随時募集しているそうです。
「良いイベントにするために、皆さんの力を貸してください」
興味のある方は、商工会へお問い合わせください。
新しい1ページに
「「大芝高原の新しい1ページ」という電飾を最初の年に作りました。それは今でも部屋に飾っていますが、今から思うと、イルミネーションフェスティバルは本当に新しい1ページになったなという感じがします。色々な皆さんのアイデアを貰ったり、力を貸してもらいながらやってきました」と有賀さん。
有賀さんたちイルミネーションフェスティバル実行委員会によって作られた新しい1ページ。
今年もイルミネーションフェスティバルは開催されます。
ぜひ会場にお越しいただき、新しい1ページをご覧ください。
そのページの続きを作っていくのは、この南箕輪に住む皆さんなのですから。


実行委員会長 有賀章治さん
Profile
南箕輪村南殿出身。
村内で精密機械工業を営む。
右の写真は、有賀さんが去年製作したイルミネーション。
塔は、土管の骨組みを利用している。
「光の祭典へのご参加とご来場をお待ちしています」
※使用した文章や写真は、広報紙掲載当時のものです。






