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今井 純さん 1976年生まれ 南箕輪村出身
宝石の専門学校を卒業後、大阪の宝飾店に4年間勤務。
2004年にオーダーメイドブライダルジュエリー専門店プリジュを開業。
楽しそうに働く父の影響
宝石店を経営する父の姿を見て、子どもの頃から宝石店への憧れがありました。私が子どもの頃、父が経営する宝石店は無店舗で、お客様のお宅に出向いて宝石を販売するスタイルだったので、私も一緒についていって父の働く姿を間近で見ていました。宝石店は、「幸せな人とばかり会う」という点で特殊な仕事だと思います。商品を買っていただいて、感謝もしてもらえる。父はとても楽しそうに働いていましたね。
大阪にある宝石の専門学校を卒業後、大阪の宝飾店で4年間勤務しました。地元に帰ってきて、父が経営する「プリンセスジュエリー」の従業員として働いていましたが、実家の近くの土地が売りに出されたことをきっかけにブライダルジュエリー専門店「プリジュ」を開業することにしました。
「何十年も使う結婚指輪」という責任感
ブライダルジュエリー専門にしたのは、「何十年も使う結婚指輪を扱う」という責任感の大きさが良いと思ったからです。
オーダーメイドでの指輪の良さは、デザイン・予算などをお客様のニーズに合わせられることです。お客様の7割がオーダーメイド、3割がプリジュオリジナルデザインの指輪を購入されています。既製品を売るお店では、ペアリングのどちらかのデザインが納得できなかったり、予算に合わせると気に入ったデザインがなかったり、カップルのどちらかが妥協しなくてはならないことも多くあります。二人が納得して、ずっと使い続けたいと思える指輪を提供できることがオーダーメイドブライダルジュエリーの魅力です。
完全予約制のこだわり
大通りにお店を構えて多くのお客様に来てもらうよりも、一組一組のお客様と丁寧にお話をする中で、お客様に心から満足してもらえる指輪を作りたいと思っていました。そのため、完全予約制にして、私一人とお客様お二人で丁寧に話を進めていくことができるようにしています。完全予約制で、朝8時から夜10時までお客様の都合に合わせて予約を入れていただいています。結婚前は式場打ち合わせなど色々と忙しいので、平日の仕事後などに指輪の打ち合わせができれば少しでもお客様の負担を減らせるかなと思っています。
完全予約制と聞くと、フラッと立ち寄る事が出来ないので、店舗を構えているお店に比べて敷居が高いと思われがちです。また、人通りが少ない場所なので、来店するお客様の8割は紹介です。そのため、ホームページに情報を豊富に載せたり、カタログを作成してあちこちのお店に置いてもらったりして、ご来店前のお客様の不安をできるだけ取り除けるように努めています。
また、ご来店してくださるお客様に感謝を込めて、初来店のお客様にはワインをプレゼントしています。分かりづらい場所で、わざわざ連絡をいただいて、来店していただくので感謝の気持ちを様々な方法でお伝えしたいと思っています。
結婚指輪ができるまで
○初来店(下見)
・ジュエリーの基礎を話したり、お客様の疑問などに応える
○サンプルを使った打ち合わせ
・大まかなイメージ・好みを聞く
○イメージもとにデザイン画を制作
○デザイン画を使った打ち合わせ
・デザイン画をもとに細かい部分をつめる。見積もりを提案。
○ワックス(ロウのようなもの)を制作
○ワックスを使った打ち合わせ
・ワックスを見たり触ったりしながら、厚みや幅などの確認・調整をする。
※ここまで今井さんが行う。
このあと、溶けたプラチナを型に流して指輪を制作したり、宝石を埋め込んだり、プリジュと契約する全国の職人と協力し、指輪1本を作るのに5名ほどの職人の手が加わり、指輪が出来上がる。今井さんは打ち合わせや仕入れのため、東京・大阪・京都・神戸・山梨に出向くこともある。
○最終打ち合わせ
・希望によりシルバーでサンプルを制作し、確認。
○完成・お渡し《約2か月》
・何度も打ち合せを重ねて完成!幸せな二人の写真を撮影。
〈たくさんのカップルの写真が収められたアルバム〉
人の幸せと出会える仕事
仕事のやりがいは、人生の中でも特に幸せを実感しているお客様とばかり出会うことができることです。指輪を作るためにお二人の話を聞きますが、なれそめや結婚式の予定、仕事や生活スタイルなど、本当に様々な人生を知ることができるのはとても楽しいです。
二人のイメージが形となる喜び
オーダーメイドなので、デザイン・予算などの要望を満たしていって、二人の納得するものを作る事が出来るのは快感です。
また、「こういう指輪が欲しい」という希望をもって来店するお客様は少ないです。「月と太陽」とか「ハワイアンジュエリーが良い」とか「出会いのきっかけとなったもの」など、お客様からイメージを伝えてもらい、「そのイメージを指輪に具現化するにはこういう作戦がありますよ」といくつかデザインを提案します。漠然としたイメージが具現化されたとき、お客様が驚いたり喜んだりする姿を見ると、うれしいですね。
お客様の希望するイメージだけでなく、仕事内容やライフスタイル、二人の好みや性格など、打ち合せをする中でそのお客様に合わせたデザインになるように努めています。とにかくお客様の納得するものに、という姿勢は、父の影響があると思います。
ずっと使い続けることができるように
プリジュのこだわりの一つとして、サイズ直しができるデザインを極力作るようにしています。実は、結婚指輪を作ったあとにサイズが変わる人の割合は8割です。サイズが変わった時に、新品と交換するのではなく今まで使っていた指輪を直して使い続けてほしいという願いがあります。サイズ直しや手入れは無料で行っています。結婚指輪というのは一生モノなので、ずっと大切にできるようお手伝いをしたいと思っています。
縁を大切にしたい
初めての来店から指輪完成まで、何度も打ち合せを重ねる中でお客様とは親しくなります。しかし、指輪が完成した後はなかなか関わる機会がなく、サイズ直し等で久しぶりにお会いするくらいしか繋がりが持てなくなってしまうのが寂しく感じます。今後の取り組みとして、お客様と出会えたご縁を目に見える形で大切にし続けていきたいと思っています。
〈今まで作成したサンプルの一部〉
完全予約制というお店のスタイルだからこそ
朝8時から夜10時まで予約可能と言っていますが、実際は何時でも可能です。自宅の横だからこそ、通勤時間のストレスがありません。また、仕事の時間があらかじめ分かっているので、逆に空いた時間は昼間も含め自分のために使うことができます。
日々の楽しみ
平日の空いた時間は、村の図書館へ行くことが楽しみの一つになっています。友人とお酒を飲むのが好きなので、平日にゆっくりと飲みに行けるのも良いですね。
土日は急にお客様がいらっしゃることも多いので、予約がなくても待機していることが多いです。また、空いた時間に息子のサッカーを見に行くのも楽しいです。
「暖簾(のれん)」 著 山崎 豊子 (新潮文庫)
修行時代を大阪で学んだ自分と重なるということもありますが
大阪商人が信用を大切に親子で頑張る物語です。
関西人の商売に対する心意気が大好きです。〒399-4511
長野県上伊那郡南箕輪村5877-4
電 話:0120-79-4122
営業時間:朝8時〜夜10時【完全予約制】
定 休 日:【完全予約制】のため定休日を設定していない。
希望日を連絡する。
U R L:http://prijew.jp/(外部サイト)
この仕事に就くには
必要な資格・プロセス
特になし
宝石の専門知識を学んだあと、宝石店に就職するか起業する。
今井さんは、宝石の専門学校で専門知識を学んだ後、宝飾店で経験を積んだ。また、客や仕入れ先からの信頼を得るため、アメリカ宝石学会(GIA)の宝石鑑別・鑑定課程を修了したり、ジュエリーデザイン課程を修了したりした。
現在日本国内では、日本ジュエリー協会が実施するジュエリーコーディネーター検定(1~3級)が主流で、宝石店ではスタッフに取得をすすめている店が多い。